相続手続きの進め方|いつまでに何をしたらいいかの全手順を解説
終活・準備,葬儀後相続の手続きが必要になったものの何から始めたらいいのか、どのような流れで行うものなのかわからない方も多いのではないでしょうか。この記事では、そのような悩みを持っている方に向けて相続に必要な手続きや、目安となる日数などを解説しています。相続の手続きを行う際の参考にしてみてください。
遺産相続に手続きが必要な理由
一般的に相続手続きというと、遺産相続の手続きのことを指します。遺産は役所や金融機関をはじめとした各種機関で手続きを行わなければ、相続することができません。後々のトラブルを避けるためにも、必要な手続きをしっかりと行っておく必要があります。
相続人同士で遺産を誰がどのくらい相続するのかトラブルが発生するケースや、故人が抱えていた借金を相続してしまうケース、さらには相続により税金を多めに支払うことになるケースなどもあります。手続きによっては期限のあるものもあるため、葬儀後は早めに取り掛かることが大切です。手続き期限については後ほど解説します。
相続はいつから始まり、誰が手続きを行うか
ここでは、相続が始まるタイミングと手続きを行う人について解説します。
相続は「被相続人」の死亡によって開始される
相続は被相続人の死亡により始まります。これは、民法882条によって定められている内容です。法律では、財産を遺した状態で亡くなった人のこと「被相続人」、財産を受け継ぐ人のことを「相続人」と言います。なお、亡くなった方、つまり被相続人の財産は、亡くなった瞬間から相続人へと移る仕組みとなっています。
なお被相続人の死亡届は、死亡を知った日から7日以内に提出しなければいけません。死亡届の提出はその後の手続きにも影響するため提出を忘れないよう注意が必要です。
手続きを行うのは「相続人」
相続の手続きは相続人によって行われる必要があります。そのため、遺産相続を行うためには、まず相続人が確定している状態でなければいけません。相続人の確定について解説します。
「相続人の確定」とは
相続人の確定とは、その名の通り誰が相続人なのかをはっきりとさせることです。相続人が誰なのかは遺言の有無によって異なるため、遺言があるかどうかを確認しなければいけません。もし遺言がないのであれば、民法で定められている「法定相続人」と呼ばれる人が相続人となります。
法定相続人とは、遺産を相続する権利がある人のことであり、配偶者もしくは血族が該当します。法定相続人を確認する際には戸籍謄本を用意しなければいけません。
相続の手続きに期限はあるか?
相続することに関しては、葬儀後いつまでに遺産相続や遺産分割しなければならない、という決まりはありません。ただし、遺産相続に関連する法的な手続きには期限が定められているものもあるため、その手続きの期限に間に合うようにする必要があります。
【要注意】遺産相続の手続きの中で期限や時効があるもの
ここでは、相続の手続きの中でも期限や時効が定められているものについて解説します。
ただし、ここで説明する内容が全てではないので注意してください。また、後述する全体の流れも合わせて確認することをおすすめします。
相続の放棄(相続開始を知った日から3か月以内)
遺産を相続するかどうかは、相続人が自分で判断することができます。相続に関しては、大きく分けて以下の3つの選択肢が用意されています。
・単純承認:すべての遺産を相続する
・相続破棄:すべての遺産を相続しない
・限定承認:相続によって得た財産を限度とし、債務などの負担を行う
相続人はこれらいずれかを選ぶことになります。なお、期間伸長の申し立てを家庭裁判所へ行えば3か月の期間延長が可能です。
準確定申告(相続開始を知った日の翌日から4か月以内)
準確定申告とは相続人が確定申告前に死亡してしまった場合、相続人が代わって手続きを行うことです。準確定申告は相続開始を知った日の翌日から4か月以内に行わなければいけません。被相続人の事業についてよくわからないといった場合は、申告準備に時間がかかる可能性があるため早めに取り掛かるようにしましょう。
相続税の申告、納税(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)
相続税の申告、納税は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。遺産についても、相続税の申告と納税が必要となるケースがあります。具体的には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の計算式で求められる相続税の基礎控除額を超えている場合です。申告は相続人全員が行わなければいけません。
遺留分減殺請求(遺留分が侵害されたことを知った日から1年で時効)
遺留分減殺請求とは、相続人に一定の相続を保障する制度のことです。例えば、遺言により特定の相続人に遺産が相続された場合などに最低限の相続が保障されます。この遺留分減殺請求は遺留分が侵害されたことを知ったその日から1年で時効を迎えます。時効が切れる前に手続きを行いましょう。
相続手続きの全体の流れ(手続き時期の目安)
ここでは、相続手続きを行う際の全体的な流れについて解説します。先ほど紹介した、期限や時効のある手続きと重複する部分もありますが、葬儀後の全体の流れを、相続に必要な手続きや目安となる手続き時期と合わせて解説しています。自身でも必要となる手続きやその期限をしっかりとご確認ください。
【相続発生】
死亡届の提出
死亡届の提出は、死亡から7日以内に行わなければいけません。死亡届が受理されて初めて火葬許可証が発行されるなど、火葬、埋葬にも関わってくるものであるため、速やかに手続きを進めてください。なお、死亡届には右側に死亡診断書がついており、こちらは死亡を確認した際の医師が記入します。
遺言書の有無の確認
遺言書の有無はなるべく早く確認しておきましょう。これは、遺言書の有無によって大きく相続手続きの進み方が変わるためです。例えば、自筆証書遺言が見つかった場合は、裁判所での検認が必要となります。
ただし、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が2020年7月から始まったため、それを利用して遺言を作成している場合は検認不要です。また、公正証書遺言はそもそも検認不要です。
相続人の確定(戸籍謄本等の取得)
相続人の確定はできるだけ早く行うようにしましょう。遺言書がない場合は相続人の調査から始めなければならず、調査には戸籍謄本の取得など様々な手続きが必要となるため、時間がかかる可能性があります。また、前妻との子供や認知している子供の存在などが明らかになるケースもあるため、早いうちから相続人確定の手続きを進めることをおすすめします。
相続財産の調査~全容の把握
相続財産がどのくらいあるのか全容を把握するための調査は、なるべく早く行いましょう。相続財産がわからないことには遺産の分割協議が進められないためです。調査によって明らかになった相続財産は財産リストを作成し、わかりやすくしておきましょう。
(その他)
その他にも10日~14日以内に行う手続きとして、以下のようなものが挙げられます。
・住民票の抹消届、除票の申請
・世帯主の変更届
・公的年金や健康保険の手続き
・介護保険の資格喪失届
・公共料金等の引き落とし口座の変更等
・死亡保険金の請求手続き
こちらも忘れずに手続きを進めておきましょう。
【相続発生後3か月以内】
単純承認、限定承認、相続放棄の選択や、期間伸長の申し立て
先ほども説明しているように遺産相続に関する単純承認、限定承認、相続放棄という3つの選択や期間伸長の申し立て手続きには期限があります。相続が始まることを知った日から3か月以内となっているため注意してください。
【相続発生後4か月以内】
遺産分割協議の実施~遺産分割協議書の作成(遺言書のない場合)
遺言書がない遺産相続では、どのように遺産を分けるのか話し合う遺産分割協議を実施し、遺産分割協議書を作成する必要があります。こちらはできるだけ早く行うようにしてください。なお、相続人が未成年の場合、分割協議の際に特別代理人等を選ぶ必要もあるため注意しましょう。
各種の相続手続き(名義変更や登記)
遺産相続に当たっては、名義変更や登記などの手続きも発生します。これらの各種手続きもできるだけ速やかに行ってください。具体的な手続き例としては、預貯金や有価証券などの解約・名義変更が挙げられます。一般的には手続き書類には相続人全員の署名と押印が必要となるため、手続きに時間がかかるかもしれません。
また、不動産の相続登記やゴルフ会員権などの各種権利の名義変更なども行う必要があります。これらの手続きも遺産分割協議書がなければできないため、注意が必要です。
【相続発生後10か月以内】
相続税申告書の作成~申告・納付
先ほども説明していますが、遺産相続に当たっては相続税申告書の作成および申告・納付が必要となります。こちらは、相続が始まることを知った日の翌日から10か月以内に行わなければいけません。
(その他の期限や時効)
ここまで紹介した手続き以外にも期限や時効に注意するべき手続きがあります。どのようなものがあるのか解説します。
【1年以内】
1年以内に行うこととしては、遺留分減殺請求が挙げられます。先ほども説明しているように、遺留分減殺請求の期限は、遺留分が侵害されたことを知った日から1年以内です。なお、相続が始まってから10年が経過すると遺留分減殺請求はできなくなります。
【2年以内】
2年以内に行うこととしては、以下のようなものが挙げられます。
・葬祭費・埋葬料の請求
・国民年金の寡婦年金請求、死亡一時金請求
・高額医療費の請求
【3年以内】
3年以内に行うこととしては、以下のようなものが挙げられます。
・生命保険金の請求
・相続税への税務調査への対応
【5年以内、5年10ヵ月以内】
5年以内もしくは5年10か月以内に行うこととしては、以下のようなものが挙げられます。
・遺族年金の受給申請(5年以内)
・故人の未支給年金の請求(5年以内)
・児童扶養手当の請求(5年以内)
・相続税の還付請求の手続き(5年10ヵ月以内)
遺産の対象となる財産の種類
ここでは、何が遺産の対象となるのか具体的に解説します。なお、実際に何が相続の対象になるかは相続財産の内容確認、価値評価が必要となる点に注意してください。
相続の対象になるもの
財産のうち、プラス財産もマイナス財産も相続の対象となります。プラス財産とは、動産や不動産、株券、知的財産権、さらには損害賠償請求権など、相続することでプラスになる財産のことです。一方のマイナス財産とは、借金や債務といった相続することでマイナスになる財産のことです。
マイナスの財産を相続したくない場合は、前述のとおり、家庭裁判所において期限内にプラスの財産を含めて相続の放棄をする必要があります。
相続の対象にならないもの
一見すると相続できそうなものでも、相続対象にならないものもあります。例えば、香典や祭祀財産は相続の対象とはなりません。また、遺品の中でも換金性の低い物も同様です。なお、生命保険金や死亡退職金に関しては、相続の対象とはなりませんが、相続税の対象にはなるため注意が必要です。
相続手続きを専門家に依頼する際の注意点
財産リストの作成や各種手続きは、相続人自身で行うこともできますが、弁護士や税理士、司法書士、行政書士といった専門家に依頼するほうが安心です。
ただし注意点もいくつかあるため、ここでは専門家に依頼する際の注意点について解説します。
誰に依頼するかは慎重に注意して選ぶ
専門家を安易に決めるのは避けましょう。例えば、税理士なのか弁護士では、遺産相続をする際の目的が異なります。基本的に相続人同士でトラブルが起こっていないときは税理士で問題ありませんが、トラブルがある場合は弁護士に依頼する方がいいでしょう。また、相続業務の知識や経験の有無、料金の明確さなどにも注意して選んでください。
葬儀会社にご相談を
誰に相談するべきかわからない、相続について困りごとがあるといったときは、葬儀会社に相談するのも1つの方法です。葬儀会社であれば、葬儀から相続関連の手続きまで幅広く認識しているため、適切な専門家を紹介してくれるなど大きな助けとなるでしょう。
まとめ
相続手続きを行う場合、法的な各種手続きの期限に注意しましょう。法的な手続きには、死亡届の提出のようにすぐに行うものもあれば、数か月以内、数年以内に行うものなどそれぞれ期限が異なります。まず流れと期限をしっかりチェックしておきましょう。
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