多くの日本人にとって、お葬式というとお坊さんがお経をあげたりお焼香をしているシーンが思い浮かぶかもしれません。

日本は基本的に多宗教の国なので、実はキリスト教を信仰されている方もたくさんいます。キリスト教の葬儀に参列する機会もあるでしょう。葬儀の作法は国や宗教によって異なるので、正しい流れやマナーをきちんと知っておくことが大切です。

この記事では、キリスト教のカトリックでおこなわれる葬儀の流れとマナーを解説します。
ぜひ、参考にしてみてください。

カトリックの葬儀とは 

カトリックは、キリスト教の2大宗派のひとつです。もう一つの宗派はプロテスタントです。
両者はまず、使用する言葉から違いがあります。カトリックでは宗教者を「神父」、儀式の中で歌う歌を「聖歌」といいますが、プロテスタントでは宗教者を「牧師」、歌を「賛美歌」と呼びます。

これらの違いは、死生観の違いから生まれるものです。
カトリックは死を「すべての人に与えられた罪」とし、生前の罪を悔い改めることによって永遠の命が得られるとしています。

一方プロテスタントは、「すべての人は生まれながらに罪人である」とし、生前キリスト教を信仰していて認められた人のみが天国に行けるとされています。

プロテスタントではあまり儀式など形式にはこだわりませんが、カトリックは聖書の朗読や神父による説法、キリストの血肉とされるワインとパンを捧げるミサなど、決められた数多くの儀式があるのが特徴です。

カトリックの葬儀の流れ

ここからは、カトリックの葬儀の流れについて解説していきます。

終油の秘跡

「終油の秘跡（しゅうゆのひせき）」は、葬儀において一番最初に神父がおこなう儀式です。信者が危篤と判断されたとき、臨終を迎えつつある信者の顔に聖油を塗る儀式で、生前の罪について神様に許しを得て、無事に天国に旅立てるよう祈るためのものです。

死ぬとき以外にもつかわれることもあり、対象者を絞り込まない「病者の塗油（びょうしゃのとゆ）」という名でも呼ばれます。

聖体拝領

信者が臨終を迎えた後におこなわれる儀式です。信者に対し、神父がキリストの肉に見立てたパンと血に見立てたワイン、もしくはブドウを与えます。キリストの血肉、聖体をいただくことで、死後の世界で復活の保証が得られるという意味がこめられています。神父が祈るあいだ、故人の家族も共に祈ります。
この儀式のもとになっているのは、聖書でも有名な最後の晩餐の故事にあるといわれています。

納棺式

その名のとおり、故人の体を棺に納める儀式です。カトリックでは納棺式の方法に具体的な決まりはありません。現代で一般的とされているのは、死化粧を施した故人の遺体を棺に寝かせ、生前に故人が用いていたクロスやロザリオを持たせたうえで、遺体に白い布をかけて棺を花でいっぱいにするという方法がよくつかわれています。

服装に特に指定はなく、生前故人が好んでいた服を着せたりします。神父が納棺の言葉を唱える儀式を終えたあとに、一同で聖書を朗読し、聖歌を歌ってお見送りをします。

通夜の祈り

本来、カトリックの葬儀には通夜はありません。日本の風習に従って、日本でのカトリックの葬儀にのみおこなわれる独特の儀式です。そのため、これといった明確な決まりもありません。一般的には自宅でおこなわれ、小さな祭壇を用意して、十字架と復活のろうそく、遺影、生花、聖水などを神父の指示に従って配置します。

神父と共に聖歌斉唱・聖書朗読などをおこなって完了です。基本的に会葬者は参加しませんが、儀式の後には故人を偲び思い出を語る場が設けられることが大半です。

葬儀

通夜から一夜明けると、故人を送り出す葬儀がおこなわれます。カトリックにおいては、葬儀はキリストの再臨と故人の復活を祈るものです。日本の葬儀とは異なり、「入堂聖歌・開式の辞・葬儀のミサ」の順でおこなわれます。

入堂聖歌は、参列者や聖歌隊が聖歌斉唱する中で、神父と棺の入場がおこなわれます。葬儀をはじめるにあたり、神父が棺に聖水をかける儀式が開式の辞、言葉の典礼と感謝の典礼による葬儀のミサが続きます。葬儀のミサでは、遺族がパンとワインを祭壇に捧げ、神父がそれを参列者に分け与えます。

告別式

告別式は、「入堂聖歌・聖歌斉唱・弔辞・弔電の紹介・献花・遺族の挨拶」の順でおこなわれます。葬儀と同様に聖歌斉唱で、神父と遺族が入場します。参列者一同で聖歌やレクイエムを斉唱し、神父による開式の宣言がおこなわれます。

故人の生きている間の経歴が簡潔に紹介され、故人に向けて寄せられた弔辞・弔電が紹介されます。喪主、遺族、親族、その他の参列者の順に献花をおこない、遺族が参列者に向けて感謝を伝える挨拶をします。

出棺式

故人の棺を火葬場に送る儀式です。まず神父が祈りを捧げ、祈りが終わると故人の顔を覆う白い布が取り去られます。ここが故人との最後の対面となり、遺族と参列者は棺の中に花を入れます。最後の別れが済んだら、遺族の男性の手で霊柩車に乗せられ運び出されます。運び出した後は、また遺族から、特に喪主から挨拶がおこなわれるという流れが一般的です。

火葬～埋葬

カトリックは基本的に土葬ですが、日本では土葬をおこなえる場所がほとんどなく、火葬をおこなうのが基本です。棺の中は花で満たされており、さらに、棺の上にも花や十字架を飾ります。参列者と神父の最後の祈りで見送り、火葬がおこなわれます。

火葬後のお骨上げは仏教葬儀と同様に、骨壷に入れられますが、仏教とは異なり黒字に十字架をデザインした布で覆われるのが一般的です。埋葬は、亡くなってから1ヶ月後の「召天記念日」におこなわれることが多くなっています。

葬儀後の流れ

葬儀の後は、亡くなってから3日目、7日目、30日目に追悼ミサがおこなわれますが、近年では3日目と7日目は省略されることが増えてきました。30日目以降は特に決まりはなく、追悼ミサは地域ごとに決められていたり、毎年命日におこなわれたりします。

追悼ミサは教会でおこなわれ、ミサの後は参加者で故人を偲ぶ会が催されたりもします。葬儀後は、教会への寄付、献金という形で謝礼をします。金額に決まりはないので、教会や葬儀社に相談してみましょう。

カトリックの葬儀でのマナー

カトリックの葬儀に参列するにあたり、知っておきたい基本的なマナーを解説します。

服装について

基本的には仏教と同じで、黒のスーツやワンピースを着用します。アクセサリーなどは華美にならないよう、控えめにします。ネクタイピンや腕時計も避けたほうが良いでしょう。真珠のネックレスは一連のもののみ、結婚指輪などはつけていても大丈夫です。

カトリックの場合は、遺族に限ってですがベール付きの帽子や手袋などもよく見られます。ハンカチなどの小物も黒で揃えておくと良いでしょう。仏教のように数珠をつかうことはないので必要ありません。また、信者であればロザリオは必須ですが、カトリック信者でない場合はあえて買い求めてまで身に着ける必要はありません。

献花について

献花は仏教でいうところの焼香にあたる儀式なので、正しい手順が決まっています。まず、花を両手で受け取って、遺族の前で一礼し、献花台にすすみます。花の茎のほうを祭壇に向け、左手は茎に、右手は花に添えて供えます。遺影に一礼してから黙祷を捧げ、顔をあげたら前を向いたまま2,3歩下がります。遺族と神父に一礼してから席に戻ります。

お悔やみの言葉

カトリックの葬儀で気をつけておきたいことは、お悔やみの言葉はつかわないという点です。これは、仏教とキリスト教とでは死生観に大きな違いがあるためです。死を「悲しみ」「不幸」と捉える仏教に対し、キリスト教では死を「新たな旅立ち」「永遠の命のはじまり」としています。

言葉をかけるのであれば「お知らせいただきありがとうございます」「安らかな旅立ちをお祈りいたします」「安らかなお眠りを」といった言葉が適切です。

御花料について

仏式の葬儀での「御香典」は、キリスト教の葬儀では「御花料」と呼ばれます。不祝儀袋に蓮の花が描かれたものは仏式となるのでつかえません。カトリックの葬儀につかうものは白無地のものを選ぶか、百合の花や十字架が描かれているものを選びましょう。

表書きには「御花料」「御ミサ料」「献花料」「御霊前」と書きます。金額の相場は年齢や関係によってさまざまですが、友人であれば5,000円～10,000円となります。

カトリックの葬儀の費用相場

カトリックの葬儀の基本的な相場は、40万円くらいから、平均で大体100万円程度です。葬儀の規模によっても変わってきます。

親族のみでおこなう小規模な家族葬であれば20〜50万円程度、基本的な流れを網羅した一般葬であれば50〜120万円程度、通夜を省略して葬儀と告別式のみでおこなわれる1日葬であれば30〜40万円程度が相場です。全体的に、細かいところまでこだわりすぎない限りは、仏教と比べて控えめな価格で済みます。

まとめ

カトリックの葬儀の基本的な流れやマナーについてまとめました。

カトリックはそもそもキリスト教であり、仏教とは死生観が異なることから言葉遣いやマナーも変わってくること、また、日本のカトリック独自の流れやマナーもあるので、事前にきちんと確認しておくことで、失礼のないようにしておきましょう。

日本人の多くは仏教での葬儀に慣れていることもあり、カトリックの葬儀をおこなうことになった場合はわからないことも多いと思います。

アイワセレモニーなら、カトリックの葬儀についても事前に内容や費用などを無料で相談・見積もりをすることができます。また、葬儀の後のサポートもしてくれます。カトリックでの葬儀にお悩みの方は、ぜひアイワセレモニーに相談してみてはいかがでしょうか。

カトリックの葬儀のご相談・見積もりはアイワセレモニーまで